農業・農家の確定申告 Q&A
お答えします
農業の収入は、農協や市場からの入金だけでは測れません。米や麦は、年末に売れ残った分も収穫時の生産者販売価額で収入に入り(所得税法41条)、自分で食べた分や贈った分も総収入金額に算入します(39条)。年金を受け取っている方は、公的年金等が400万円以下で年金以外の所得が20万円以下なら申告は要りません。
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一解説
所得税法41条は、農業を営む居住者が米麦その他政令で定める農産物を収穫した場合、その収穫した時における価額(収穫価額)を、収穫の日の属する年分の事業所得の総収入金額に算入すると定めています。同条2項では、その農産物はそのときに収穫価額で取得したものとみなされます。
条文をそのまま読むと収穫のたびに収入を立てるように見えますが、申告の様式はそうなっていません。収入金額は「販売金額+家事消費・事業消費+雑収入-期首棚卸高+期末棚卸高」で計算します。年末に倉庫へ積んだままの米は、期末棚卸高として収穫時の生産者販売価額(庭先価額)で収入に入り、翌年売ったときは同じ額が期首棚卸高として差し引かれます。二重にはなりません。
帳簿に収穫時の金額を書く欄もありません。収穫量は数量だけを記録し、金額を書くのは販売した時です。在庫を数えるのは決算のときで、野菜類やぶどう・桃・梨のように収穫から販売までが短いものは、この棚卸しを省略できます。省略した分は年末の在庫に上がらず、売れた年の収入になります。
通帳の入金だけを1年分足しても、この構造のもとでは所得と一致しません。判定の前に、収穫の記録と在庫の数量を確かめてください。
収穫基準の対象となる農産物は、所得税法施行令88条が列挙しています。米や麦などの穀物のほか、馬鈴しよ、甘しよ、たばこ、野菜、花、種苗その他のほ場作物、果樹、樹園の生産物、温室などの施設で生産する園芸作物まで含まれます。耕種で生産する農産物は、おおむねこの範囲に入ります。肉・卵・乳などの畜産物は対象外で、売った時の収入になります。
所得税法39条は、たな卸資産を家事のために消費した場合、その消費した時における価額を総収入金額に算入すると定めています。自家消費した野菜や米、親戚に送った分も、この規定で収入に上がります。
ここから必要経費を引いた残りが事業所得です。種苗費・肥料費・農薬費・燃料費・農機具の減価償却費・農地の固定資産税などが経費に入ります。
この所得の合計が所得控除の合計額を超えれば、申告義務が生じます(所得税法120条1項)。基礎控除の額は令和7年分から変わりました。令和7年分・令和8年分は、合計所得金額132万円以下が95万円、132万円超336万円以下が88万円、336万円超489万円以下が68万円、489万円超655万円以下が63万円、655万円超2,350万円以下が58万円です。令和9年分以後は、132万円以下が95万円、それを超えて2,350万円以下が58万円になります。令和6年分以前は2,400万円以下が一律48万円でした。
年金を受け取りながら農業を続けている方は、所得税法121条3項の判定に入ります。公的年金等の収入が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となっている場合、年金以外の所得が20万円以下であれば、確定申告書の提出を要しません。
ここでいう年金以外の所得が、いま計算した農業所得です。出荷額ではなく、自家消費まで含めた収入から経費を引いた後の数字で20万円を判定します。
会社勤めをしながら農業をしている方は、121条1項1号の判定です。給与の収入が2,000万円以下で、1か所から受けていてその給与の全部が源泉徴収の対象になっているなら、給与・退職以外の所得が20万円以下のとき提出を要しません。
確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日まで、期限も3月15日です。還付を受けるための申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
青色申告特別控除は、法定申告期限までに確定申告書を提出することが最大額の適用要件です。3月15日を過ぎて提出すると10万円になります。
残しておく記録は、農協の精算書、直売所やインターネット販売の売上明細、資材店の領収書、そして収穫量と自家消費量のメモです。最後のひとつは自分で書き留めておかないと、あとから再現できません。所得税の申告が不要な場合でも、市区町村への住民税の申告は別に必要になることがあります。
二一次情報
所得税法 第36条第1項(収入金額)(抜粋)
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
所得税法 第39条(たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入)
第三十九条 居住者がたな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)を家事のために消費した場合又は山林を伐採して家事のために消費した場合には、その消費した時におけるこれらの資産の価額に相当する金額は、その者のその消費した日の属する年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
所得税法 第41条(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)
第四十一条 農業を営む居住者が農産物(米、麦その他政令で定めるものに限る。)を収穫した場合には、その収穫した時における当該農産物の価額(以下この条において「収穫価額」という。)に相当する金額は、その者のその収穫の日の属する年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
2 前項の農産物は、同項に規定する時にその収穫価額をもつて取得したものとみなす。
所得税法施行令 第88条(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)(抜粋)
第八十八条 法第四十一条第一項(農産物の収穫の場合の総収入金額算入)に規定する政令で定める農産物は、米、麦その他の穀物、馬鈴しよ、甘しよ、たばこ、野菜、花、種苗その他のほ場作物、果樹、樹園の生産物又は温室その他特殊施設を用いて生産する園芸作物とする。
所得税法 第120条第1項(確定所得申告)(抜粋)
第百二十条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
所得税法 第121条第1項・第3項(確定所得申告を要しない場合)(抜粋)
第百二十一条 その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
3 その年において第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等(以下この条において「公的年金等」という。)に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び公的年金等に係る雑所得以外の雑所得の金額の合計額をいう。)が二十万円以下であるときは、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額又は課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。
所得税法 第122条第1項(還付等を受けるための申告)(抜粋)
第百二十二条 居住者は、その年分の所得税につき第一号から第三号までに掲げる金額がある場合には、次条第一項の規定による申告書を提出することができる場合を除き、第百三十八条第一項(源泉徴収税額等の還付)又は第百三十九条第一項若しくは第二項(予納税額の還付)の規定による還付を受けるため、税務署長に対し、第百二十条第一項各号(確定所得申告)に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
国税庁 タックスアンサー No.1199 基礎控除(抜粋)
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。
132万円以下48万円/95万円/95万円
132万円超336万円以下48万円/88万円/58万円
336万円超489万円以下48万円/68万円/58万円
489万円超655万円以下48万円/63万円/58万円
655万円超2,350万円以下48万円/58万円/58万円
2,350万円超2,400万円以下48万円/48万円/48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円/32万円/32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円/16万円/16万円
2,500万円超0円/0円/0円
(注1) 令和7年分の上記規定は、令和7年12月1日に施行されます。施行日前の適用関係などについては、「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A(令和7年5月)」をご確認ください。
(注4) 令和元年分以前の基礎控除の金額は、納税者本人の合計所得金額にかかわらず、一律38万円です。
国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(抜粋)
大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人(確定申告をすれば税金が還付される人は除きます。)は、確定申告をしなければなりません。
1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
3 給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人(注)
(注) 給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
4 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
5 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
6 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
7 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告(抜粋)
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続です。
源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。
対象者または対象物
確定申告をする必要がある方
その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は、確定申告をする必要があります(控除しきれなかった外国税額控除の額、源泉徴収税額または予定納税の額がある場合を除きます。なお、この取扱いは確定申告書の提出期限が令和4年1月1日以後となる確定申告書について適用され、当該提出期限が同日前となる場合にはこれらの控除しきれなかった額があったとしても確定申告をしなければならないこととなります。)。
確定申告をする必要がない方
給与の収入金額が2,000万円以下、かつ、給与を1か所から受けていて、その給与の全部について源泉徴収される人で給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下である人等、一定の場合には確定申告をしなくてもよいことになっています。
※ 給与所得がある人で確定申告をする必要のある人については、コード1900「給与所得者で確定申告が必要な人」をご覧ください。
また、国内において公的年金等の支払を受けている人については、次のいずれにも該当する場合、確定申告をする必要はありません。
1 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下である。
2 その公的年金等の全部が源泉徴収の対象(注)となっている。
3 その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である。
(注) 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の提出先であって、その年中の年金の額が一定の金額に満たないため源泉徴収を要しないこととされているものは、ここにいう「源泉徴収の対象」に含まれます。
申告等の期間
原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。
申告等の期限
原則として、その年の翌年3月15日です。
国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告(抜粋)
確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
ただし、青色申告特別控除(55万円、65万円)を受けようとする場合など、法定申告期限(原則翌年3月15日)までの確定申告書の提出が要件となっている特例を適用する場合には、還付申告であっても法定申告期限までに提出する必要があります。
国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(抜粋)
青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その1つに所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除するという青色申告特別控除があります。
国税庁「令和7年分 収支内訳書(農業所得用)の書き方」(収入金額の明細)(抜粋)
○収入金額の明細
販売金額 本年中の販売金額を記入します。なお、販売後、まだ実際に代金を受け取っていない場合でも本年中に販売したものについては、全て本年分の販売金額になります。
家事消費・事業消費 金額 農作物を家事及び事業(雇人費の現物支給など)のために消費した場合に、収穫時の生産者販売価額により計算して記入します。
農産物の棚卸高 収穫時の生産者販売価額により計算して記入します。なお、米麦等の穀物以外の農産物で数量が僅かなものについては、棚卸しを省略しても差し支えありません。
国税庁「令和7年分 白色申告者の決算の手引き(農業所得用)」1 農産物の棚卸し(抜粋)
1 農産物の棚卸し
収穫した農産物の棚卸価額は、農産物の収穫時の価額によって計算します。この農産物の収穫時の価額とは、収穫した時の生産者販売価格(庭先裸価格)によることになっています。
なお、専ら家事消費などに充てるための作物、野菜類、ぶどう、桃、梨など収穫時から販売消費されるまでの期間が比較的短い果実については、棚卸しを省略しても差し支えありません。また、甘しょ、馬れいしょなどの芋類やみかん、りんご、くりなどの果実についても、その数量がわずかなものは棚卸しを省略できることになっています。
国税庁「帳簿の記帳のしかた(農業所得者用)」3 記帳の内容等/(4) 簡易な方法による記載(抜粋)
3 記帳の内容等
(1)農産物の収穫に関する事項 Ⓐ収穫の年月日 Ⓑ農産物の種類 Ⓒ数量
(1)農産物の収穫価額に関する事項 Ⓐ収穫の年月日 Ⓑ農産物の種類 Ⓒ数量
(2)農産物、繭、畜産物等の売上、家事消費等に関する事項 ①取引の年月日 ②相手方の名称 ③〜④金額
(4) 簡易な方法による記載
(1)農産物の収穫に関する事項 米、麦その他の穀物以外の農産物については、収穫に関する事項の記載を省略することができる。
(1)農産物の収穫価額に関する事項 米、麦その他の穀物以外の農産物については、収穫に関する事項の記載を省略することができる。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三農業・農家の場合
農業には、他の職業にない収入の立ち方が二つあります。ひとつは収穫基準です。米や麦は、年末に売れ残った分も期末棚卸高として収穫時の生産者販売価額で総収入金額に算入されます(所得税法41条)。入金があった年ではなく、収穫した年の所得になります。もうひとつが自家消費で、39条により、家事のために消費した農産物もその時の価額で収入に上がります。
この二つがあるため、「農協からの入金額」で申告の要否を判断すると、実際の所得とずれます。とくに年金を受け取りながら農業を続けている方は、20万円という細い入口の内側か外側かが、自家消費の計上ひとつで変わります。収穫量と自家消費量は、その年のうちに手元でメモしておいてください。あとから思い出して書けるものではありません。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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